Q:養子縁組と代襲相続の注意点は?

Q:私(女性)は、平成15年にAさん(男性)と結婚しました。私は、前夫と死別していて、前夫との間にはすでに成人している子どもBがいました。今後のことを考えて、同年、AさんにはBと養子縁組をしてもらっていましたが、BはすでにCさんと結婚していて、Cさんとの間には子どもとしてDさん(平成10年出生)がいました。
養子縁組後、平成18年にBとCさんの間には、新しくEさんが誕生しましたが、その後まもなく、Bは交通事故で亡くなってしまいました。14年が経った令和2年、夫のAさんが亡くなりました。 私とAさんの間には子どもはいないため、私自身と、養子縁組をしたBが相続人だと思いますが、Bはすでに死亡しています。この場合、代襲相続によってDさんとEさんは両方代襲相続人になるのでしょうか。

A:結論としては、Eさんは代襲相続人になれますがDさんは代襲相続人になれません。

Qの内容について図を使って説明すると、以下のようになります。

このQの要点としては、

・Dは、AとBの養子縁組前に誕生しており、Eは、AとBの養子縁組後に誕生している

というところになります。

代襲相続人とは?

代襲相続人制度とは、相続の開始時に、相続人がすでに死亡している場合、相続人の子どもが相続権を引き継ぐものです。簡単に言うと、被相続人の子どもがすでに死亡している場合に、その子ども(つまり被相続人の孫)がいれば、相続権が引き継がれるという訳です。

代襲相続について詳しく知りたい場合は、当事務所の用語解説ページをぜひご覧ください。

被相続人AとAの養子Bは、血のつながりはないものの、養子縁組をしていることから、法律上の親子関係が発生しています。なので、Aの相続における相続権を持つはず…ですが、Bがすでに死亡しています。この場合、代襲相続により、Bの子どもであるDEがBの相続権を引き継ぐ(代襲相続人になる)と考えていいように思います。

ところで、代襲相続制度は民法にて規定されていますが、その条文を見ると以下のようになっています。

民法第887条 
  被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条(相続人の欠格事由)の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りではない
(民法第887条条文より)

第2項が、相続人の子の代襲相続を規定する文ですが、その但し書きに、「被相続人の直系卑属でない者は、この限りではない」と書かれています。(直系卑属とは、子や孫など、自分より後の世代直通系統)

AとBの養子縁組により、法律上の親子関係が発生している訳ですが、この親子関係は、養子縁組を行った平成15年から生じていると考えます
Dは、平成15年の養子縁組より前、つまりAとBの血のつながりが生まれる前に誕生しています。この場合、DはAの孫である、つまり直系卑属であるとは言えなくなってしまうのです。ですが、これは、再婚相手の連れ子との血族関係が当然発生しないこととよく似ていると思います。
一方、Eは平成18年に誕生していますが、すでにAとBの血のつながりがある状態で誕生していますので、EはAの孫である、つまり直系卑属であると言える訳です

このように、相続に養子縁組が関係する場合、当然のように代襲相続が発生するとは言えない場合があります。養子の子(この例だとD)が、養子縁組前に誕生していた場合、養親(この例だとA)とは血族関係がないということになります。

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