Q:相続放棄をしても死亡保険金は受け取れる?
Q:被相続人の死亡を機に、死亡保険金の給付がありました。これを受け取ってしまうと、相続放棄はできなくなってしまうのでしょうか。
A:死亡保険金は、受取人固有の権利とされており、相続財産にはあたりません。なので、受け取ったとしても相続放棄は可能ですし、逆に言えば、相続放棄をしたとしても受け取ることが可能です。
相続放棄をした相続人は、被相続人のプラス財産及びマイナス財産の一切を引き継がないことになります。ですが、被相続人の死亡をきっかけとして発生するような金銭について、相続放棄をしたとしても受け取れる場合があります。Qに載っている死亡保険金もその1つです。
<相続放棄をしても受け取れるものの例>
・死亡保険金
生命保険の受取人が指定されている死亡保険金は、受取人の固有の権利であり、受取人固有の財産とみなされます。
・香典、ご霊前
香典やご霊前は、被相続人ではなく、喪主の方に贈られたものとして扱われますので、相続財産ではありません。
・仏壇、お墓
仏壇やお墓などの祭祀財産は、遺産分割の対象にもならず、承継者に選ばれた方が引き継ぐものとみなされます。
・葬祭費、埋葬料
被相続人の加入していた保険(健保・社保)によって、葬祭費や埋葬料などが支給される場合があります。これは、被相続人の死亡によって支給される給付金なので、相続財産には当たりません。
・家族が受取人の死亡退職金
死亡退職金については、受取人が被相続人以外である場合には、受取人固有の財産となりますので、相続財産には当たりません。一方で、被相続人が受取人となっていたり、受取人の指定がなかったりする場合には相続財産となる点に注意が必要です。
・遺族年金、未支給年金
遺族年金は、被相続人に生計を維持されていた家族の生活を保障するために支給される年金であり、未支給年金は、被相続人が生前に給付されるはずが受け取れなかった年金です。双方とも、遺された家族に対する固有の権利として、相続財産には含まれません。
総じて、相続財産にあたるかどうかは、「被相続人の生前に発生している権利や財産か、被相続人の死後に発生している権利や財産か」、「被相続人自身に受け取る権利があるかどうか」という視点で見るとある程度分けやすいかもしれません。
ただし、1点注意してほしいのは、上記の金銭については、「みなし相続財産」に当てはまり、相続税が課税される場合があるということです。
「相続財産」には、「民法における相続財産」と「相続税法における相続財産」の2種類があり、ざっくりと言えば相続税法における相続財産の方がより広義であり、民法における相続財産を内包しています。
そのため、相続放棄をしたとしても、相続税申告と無関係ではない場合がありますので、ご注意ください。
なお、相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×相続人の数)については、相続放棄をした人がいてもその放棄がなかったものとして計算するので、控除額は基本的に変化しません。