Q:不倫相手への遺言は有効?
Q:亡くなった父の遺言が見つかったのですが、そこには、父の不倫相手に遺産の大部分を渡す内容がありました。不倫相手に財産を遺すような遺言は有効なのでしょうか?
A:公序良俗違反が争点となりますが、必ずしも無効となる訳ではありません。
民法第90条は、「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」と規定しており、通称「公序良俗違反」と呼ばれます。ざっくりと言えば、社会一般的な倫理に反するような行為は無効になるということです。
不倫とは、婚姻関係にあるものが配偶者以外の人間と肉体関係を持つことで、社会通念上道理を外れた行為で間違いありません。そのような相手に対し財産を遺贈するとなれば、相続人からすると許しがたいと思うでしょうし、それこそ公序良俗違反と考えるでしょう。
一方で、人は、自分の財産を誰に渡すかということを、遺言によって自由に指定できますから、不倫相手に遺贈することも事実上可能です。ですから、不倫相手に財産を遺贈する行為が、公序良俗違反で無効になるかどうかというところが争点となります。
実は、このような事例が過去の裁判でも争われたことがあります。
最判昭和61年11月20日においては、
1.遺贈が不倫関係の維持を目的とせず、専ら相手の生活を保全する為に行われている場合で
2.遺言内容が相続人の生活の基盤を脅かさないものであること
などの事情がある場合には、民法第90条に違反するものとはいえないと判断しています。
実際に、裁判例では、妻との婚姻関係が事実上破綻した後に同棲を開始して十数年に及んだ女性に対し、不動産など全財産を遺贈する旨の遺言を作成したケースにおいて、「公序良俗に反しない」と判断された事例があったり、同様のケースでも、不倫相手の女性が婚姻関係の破綻の原因となった場合に遺言が公序良俗に反すると判断された事例もあったりします。
不倫関係にあった人物に対する遺贈が、直ちに無効だと判断される訳ではありません。